第320章

事が終わると、羽澤亜は満ち足りた顔でソファに身を投げ、だらりと休んだ。

天瀬姫奈に焦がれ続けて何年だ。今日、ようやく——願いが叶った。

ソファに残った、目に刺さるほどの鮮烈な赤。それこそが、羽澤亜にとって何よりの証だった。天瀬姫奈は、完全に自分のものになったのだと。

当の天瀬姫奈はソファの脇で身を縮め、虚ろな目で一点を見つめている。唇を強く噛みしめて、声も出さない。

唇は切れ、化粧はぐしゃぐしゃ、髪は乱れ、涙だけが止めどなく頬を伝った。

守り抜いてきたものだった。愛する人のために。丹羽光世に捧げるはずだったのに——よりにもよって、自分が嫌悪する男に奪われた。

天瀬姫奈は黙ったまま...

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